前回はアメリカの式場で、1つ目の特徴としてあげられるライティングについてお話しました。
フューネラル・チャペルの第二の特徴は、ファミリールームを備えているということです。グリーフプロセスにおける葬儀式の大きな役割の中で、「悲嘆などの感情を表す助けとなる」ということがあげられています。例えば、韓国では、未だに「泣き女」の習慣が残っているのも、泣き女の存在は、ご遺族が悲嘆の感情を表に出すことを自然なものとするからです。
では、現在の日本においてはどうでしょうか。ご遺族にとって葬儀が最後のお別れの場であれば、様々な感情が沸いてくるのも当然であります。だが日本では、日常生活においても感情表現はなかなか受け入れられにくく、ましてや葬儀の場面においては、あまりに悲しみを表現していると、第三者が「そんなに悲しんでいるとお亡くなりになった方が成仏できないよ」という言葉などをかけて、悲しみを十分に体験する場さえも与えられないことも見受けられます。僕自身、多くのご遺族から、悲しみをはじめとする悲嘆のさまざまな感情を表す場がないという心からの声を聞きました。
ご遺族が人の目をきにすることなく、泣くなどの感情表現ができる環境を提供できないものか、その方法を僕はアメリカにおける葬儀修業の中で学んだ気がします。
それは少なくとも2つ考えられると思っています。一つは時間的、もう一つは空間的な距離をおくことで実現可能だと思います。
ファミリー・ルームとは、この後者の空間的な距離を置く目的で作られています。アメリカでは通常であれば、長方形をしたチャペルの、お柩が安置されるチャペル前方の左側もしくは右側に、ご家族や親しい友人20名程度が座ることの出来る小さな部屋(ファミリー・ルーム)を増設しているのです。そこでは、自分が「悲しみにくれ、取り乱している」と人から見られるなどと心配する必要もなく、心ゆくまで、悲嘆の感情をだすことが可能となります。
世間体というものが心の問題よりも大きな日本においてこそ、このファミリー・ルームが必要なのではないかという気がします。ご遺族の立場に立ってサービスを提供する一つの方法なのではないでしょうか。