今回と次回で、米国で広く親しまれているお葬式のスタイル、『メモリアルサービス』と『ビジテーション』について書きたいと思います。
火葬がアメリカにおいて増加すると共に、メモリアルサービスを葬儀の代わりに行うお客様の数も増えてきました。ご遺族のグリーフプロセスという観点から考えれば、火葬にする前に、ご遺体に対して区切りをつける葬儀を行うのが一番望ましいのだが、さまざまな事情によりできない場合は、このメモリアルサービスを行うことを勧めていました。まずは、ビジテーションについて説明します。
メモリアルサービスを希望されるご遺族は多くの場合、家族や親しい親類や友人だけで、ビジテーションもしくはビューイングを行います。ビューイングとは、1~2時間という時間の中で、ビューイングテーブルの上にお休みになられているご遺体にお別れを行うプライベート・ビジテーションであると言えます。
このプロセスは、葬儀の代わりにメモリアルサービスだけを執り行いたいと考える方にとって、悲嘆を癒すためには重要な時間の一つと言えます。なぜなら、ここで、愛する人を亡くした人は、「故人がもう2度と目を覚ますことなどなく、死が現実である」ことを受け入れるのです。
それは、葬儀は終わり、訪れるお客様の数が減り、故人がいない生活を始めなければいけないことを自覚しなければならなくなったときに、その現実を徐々に受け入れられるようになるかという点でも、とても重要なことなのである。したがって、ビューイングの時間は葬儀式と同様に、死の現実を受け入れ、悲嘆の感情を表に表すのに、遺族にとって助けとなる時間・プロセスと言えます。
この間、葬祭ディレクターはできる限り黒子に徹し、何か必要なことがあれば対応できるように準備して、ビジテーションルームを退出する。ご遺族に故人との最後の語らいの時間をしっかりとってもらうためです。この時間を充分にとり、自分たちなりの区切りをつけた後、葬祭ディレクターはご遺体を火葬場へと搬送します。
一つ残念だったのは、私がインターンとして勤めていた葬儀社では、公衆衛生の面を考慮して、このプライベート・ビジテーションを、故人の家族だけに限定したことです。そのため、ご家族でない方で個人に対するお別れ、区切りが必要な方にとって、大切な機会を失わせていたのではないかという気がしています。